なぜ、日本の水ビジネスは世界で勝てないのか―成長市場に挑む日本の戦略 (B&Tブックス)
上下水道や水処理分野を中心に、世界の水ビジネスの現状や、日本の国際展開に向けた強み、弱みについて、具体技術や企業活動を含めて丁寧に解説している一冊。日本で培った技術や仕組みを改めて認識し、更に国際展開のリスクも理解した上で、これからグローバルな水市場へ展開を図りたい企業や自治体担当者におすすめの内容。
トコトンやさしい水道の本 (B&Tシリーズ―今日からモノ知りシリーズ)
日常生活に欠かせない上水道の世界と日本の歴史、取水から浄化から分配までの詳しい仕組み、更に水道に関わる雑学までを丁寧な説明と判りやすい絵で紹介している内容。水道の基礎を知りその魅力を再発見したい人におすすめの一冊。
水ビジネスの現状と展望 水メジャーの戦略・日本としての課題
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一言で言えば、『水資源に関する限り、日本が資源大国に“なりうる”』ということを丁寧に記述した
良質のビジネス書であり、啓蒙書・教養書です。
“なりうる”という筆者の想いは、現状の日本の上下水道の経営体質の現状とその問題点に集約され、
その過程において、海外各国の例、また、水メジャーとしてのビジネスの紹介を順々と手際よく記述
しており、非常に説得力のある構成になっています。
しかし圧巻なのは、この本の8章以降、13章までが、上下水道の歴史と基礎を初歩から解説していて、
ありがちな『水ビジネス書』でなく、本当の基礎からの教養書にもなりえている点です。
筆者自身が、序文で“水ビジネスの基礎知識、すなわち上下水道の歴史、技術、水質問題はここに
まとめたので、初心者はまずそこから読まれたい”と明記しているところです。上・下水道を同時に
キチンと掘り下げて描いているこの後段部分(ページ数にしても約半分)だけでも十分な教養書・教科書
になりうるところが凄みというか、筆者の『本気度』を実感できます。
世界の“水”が支配される!―グローバル水企業(ウオーター・バロン)の恐るべき実態
会社名、かかわった人物の名が具体的に書かれていて、どこか知らないよその国のお話とは感じられずに興味深く読めた。日本の国力が下がるとこの本に出てくる国々のようになる可能性があるのかも、という考えがチラと浮かんで恐ろしくなった。
南アフリカでは、料金を払えないために水道を止められた何千人もの人々が汚染された川や湖から水を得ることを余儀なくされた結果、コレラの大流行が……。
ボリビアのコチャンバ市では世界銀行の勧告に従い水道を民営化した。それによって水道料金は値上げされ、料金不払い者の水道がストップ、地下水に対する権利をも会社が獲得したため、住民の所有する井戸については使用料を払わなければ閉鎖することが可能となった。その後水暴動が起き……。
オーストラリアでは汚水処理場の設備の不具合と監視ミスによる悪臭騒動が……。
その他、本文中にはブエノスアイレス、マニラ、インドネシア、コロンビア、米のアトランタとインディアナポリス、カナダなどの例が上げられており、巻末には『ウォーターバロン 企業プロフィール』『水問題に取り組んでいるNGOの一覧』などがある。
この二つの一覧、さらにくわしく調べたい人の手助けになるのではないかと思う。
ウォーター・ビジネス――世界の水資源・水道民営化・水処理技術・ボトルウォーターをめぐる壮絶なる戦い
昨今の日本では、公営サービスよりも民営サービスの方がコストも低く、質も高い、というイメージがあるように思う。
不採算の公営サービスを民間企業に払い下げするという話題は「かんぽの宿」だけでなく、これから広がっていくのは避けて通れないことであろう。
水道事業についても、徐々にではあるが民間企業への委託が行われている。
今のところ日本では大きな問題として取り上げられていないが、水道民営化によって貧しい人たちが安心して飲める水へアクセスできなくなってしまうという、危機的な状況に陥った事例が世界中に溢れている。
また、ダム事業や淡水化プラントなど、一見水問題解決に有効と思われる技術に対しても、企業が行うことで別の環境問題を引き起こすことも知られてきている。
本書では、水にまつわるビジネスで莫大な利益を得ている企業と、大きな被害を受けてしまった一般市民の実情、そして「水は人権」を標榜し安全な水へアクセスする権利は全ての人が持つべきと訴える「ウォーター・ジャスティス・ムーブメント」の活動について詳しく書かれている。
読むだけで世界的な水問題の全体像を俯瞰することができ、日本では当たり前のように手に入る「水」について考える大きなきっかけとなるだろう。
日本は世界に誇れる公営水道事業があるので今はまだ実感できないことばかりだが、このまま不況が進めば確実に民間企業への移管という話は出てくるであろう。巻末に「日本における「ウォーター・ビジネス」の現状と問題」ということで翻訳者の解説が追加されており、遠くない将来に実際に選択を迫られることになるように感じた。
その時、世界で起きている問題を繰り返さないためにも、実際に何が起きていて、何が問題であるか知ることは大事である。