小説十八史略(六) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
最近になってようやく「隋唐演義」や「楊家将」「岳飛伝」などの小説で
知名度の上がりつつある唐末〜南宋末時代を分かりやすく描いてます。
史実を下敷きにしてるとはいえ、ここまでの長編なら息切れしそうなものですが、
そんな事は一切なく。原典の「十八史略」が書かれる要因になった南宋の忠臣・文天祥の
最後の奮戦と、愚直なまでの忠義を詠った正気の歌。
そして彼の処刑によって小説の幕が下りる辺りは感無量でした。
中国史もののバイブルといえるこの小説は、このジャンルに興味を持った方に
自信を持って勧められます。
願わくば作者にはその先の、元、明、清王朝の興亡も描いて欲しかったですが。
小説十八史略(一) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
小説として面白いことは、別のレビュアーの方が既に述べておられますから
省略します。とてもよくできた歴史小説だと思います。しかし、この本は曾先之が書いた原本十八史略とは、全く違うのですよ。曾先之の十八史略は評価の低い歴史書で、単なる歴史書の抜粋ですから読んでいて餘り面白くありません。はっきりいって創作を大幅に交えた陳氏の方が面白いのです。
古典の教材として良く使われる曾先之の本の訳を読みたい方は、別の本を読んだほうがよいでしょう。
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とうとう買ってしまいました。
中国にまだ旅行者が自由には入れなかった時代の今は失われつつある趣のある美しい現地の映像がたっぷりと楽しめます。
でもちょっと残念なのはデジタルリマスターとあったけど、画像があまり綺麗じゃないように思えます。
小説十八史略(五) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
本巻は、隋の煬帝の失政とその哀れな最後、その後群雄割拠の時期を経て、唐が中国を統一し、武則天による中断を挟むものの、太宗による「貞観の治」、玄宗による「開元の治」を中心に大帝国の絶頂期を迎えたのもつかの間、権力の腐敗が忍び寄り、安史の乱が勃発、顔真卿・郭子儀ら忠臣の獅子奮迅の活躍もあって安史の乱が終息するが、盛唐の時代も終わりを迎えるところまでをカバーしています。このうち、隋末・唐初の混乱期は隋等演義で取り上げられ、日本でも田中芳樹氏等の良書もありますが、多彩な人物が入り乱れて「中原に鹿を追う」波乱の時代であったことはあまり知られていないのではないでしょうか。本書では100頁以上を割いて紹介してくれます。そして意外と知られていないのは、貞観の治も開元の治もライバルの粛清から始まったという事実。食うか食われるかの時代だったのですね。また、この時代は好き嫌いはあるでしょうが、女性が華を添えた時代。武則天が中国史唯一の女帝にまでステップ・アップしていく過程には読者は引き込まれずにはいられないでしょう。彼女は優れた政治家でしたが、晩年は君側の奸の跋扈を許し、寂しい死を迎えます。奸臣が除かれ、唐が復活する場面は気分が晴れ晴れします。そして楊貴妃。親戚の不良少年あがりの楊国忠が台頭して玄宗側近の座を安禄山と争ったのが安史の乱の直接の原因。長安をのがれたところで軍がストライキを起こし、軍の要求に屈した玄宗が彼女を殺させる場面は、哀れな女の最後として本書のクライマックスと言えるでしょう。著名な人物が多数登場して波乱万丈の人生模様を織り成す本巻も、歴史の面白さを満喫させてくれます。欲を言えば、政変に巻き込まれた李白・杜甫・王維といった大詩人も取り上げていたらもっと充実した本になったでしょう。
小説十八史略(三) (講談社文庫―中国歴史シリーズ)
中国の歴史が好きなのでシリーズ通して大変面白く読めました。
私がおすすめするのは漢の武帝とその息子、戻太子にまつわる悲劇から宣帝時代までのくだりです。
さまざまな伏線と謀略とが入り混じってすごく面白いのです。
登場人物が多い上に長い年月のことを書いていますので、人物の掘り下げなどは多くないのですが、このシリーズでは人物を描くことを目的としていませんので問題ありません。
むしろすっきりしていて良いくらいです。
時代の大きな流れ、その中で象徴的ともいえるエピソードの数々を作者の想像を交えて書いているのですから、人物に感情移入したい人には向いていません。
客観的に時代の流れを見ることができ、歴史に造詣が深くない人にも楽しく読めます。決して堅苦しくありません。
エピソードの大半は皇帝やその周辺の人々のスキャンダルなんですから…。
この巻の目玉はやはり、武帝の時代だろうと思います。
特に霍去病は人気のある武将ですからご存知の方もいると思います。
また、悲劇の将軍李陵や彼を弁護した為に罰せられた司馬遷など見所は盛りだくさんです。
ぜひ、読んでみてください。