メシ喰うな
今は作家として有名な町田康(当時は町蔵)のバンド、INUのデビュー作。パンクの歴史を語る上ではずせないアルバムだけあって、当時のパンク・サウンドを代表するような音。町蔵の吠えるような声と「メシ喰うな!」のメッセージ(?)には、今聴いても刃物を突きつけられたような独特の感触がある。
犬とチャーハンのすきま
待ちに待った町田康氏のニューアルバム。
数年前に録り終えていたにもかかわらず、やっと日の目をみることになった。
とにもかくにもこうして新しい楽曲を聴くことができることがうれしい。
アルバム内容はバラエティに富み、ブルース、ジャズ、パンク、ポエトリーリーディングetc...
そして"うどん"な要素をふくんだロック。
歌われている"うどん"や"あなた"は何のメタファーであるのか?
聴きこんでいくうちにその指し示すものがわかりつつある。深い楽曲群である。
これまでのアルバムにおいても様々な試みを感ずることができたが、この"犬とチャーハンのすきま"は
さらに一歩も二歩も前へぐいぐいと出てきたように思う。
音楽活動よりも執筆活動に比重をおいている町田氏であるが、音楽と距離をもつことによって余裕をも
感じさせる貫禄の一品である。
ライブ活動も再開すると某雑誌のインタビュー記事を拝見した。
とってもうれしい'!!!
告白
文章にするとかわいげのある河内弁。
町田康の独特の文体が主人公・熊太郎の生き方に絶妙に溶け込んだ紛れもない傑作。
私はこんな町田康を待っていたのかもしれない。
“思弁家”ゆえに、思いと言葉が一つにつながらず、世間とうまくコミュニケーションがとれない熊太郎。
村の人間には馬鹿かやくざか厄介者と思われてしまっているけど、ほんとは生きるのが下手なだけのいいやつ。
自分はこのままで終わる人間ではない・・・
いつかは・・・
そう思い続いてきた熊太郎の行く末は、自分を利用し、馬鹿にし、裏切った人間たちとその親族達を大量に殺すこと・・・!!
終盤までは決して人前では読めない(必ずふきだしてしまうから)くほほと笑いのこぼれる町田ワールドですが、大量殺人の場面以降は笑いどころか凄まじさに圧倒されながら震えて読みました。
弥五郎と熊太郎の関係も素晴らしい。
男同士っていいですね。
熊太郎への恩を忘れず、絶対的に味方をしてきた弥五郎の中に
たった一度だけの迷いが出たときに起こってしまった事件。
あのときの弥五郎の後悔・・・あれを思うと女の私でも男泣きします。
“二人で無茶すること”の結末がああいう形で終わってのは、
二人にとっても読者にとっても幸せなことでした。
人一倍悩み考えているのに、必ず失敗や後悔を引き起こす。
熊太郎は人間くさすぎるといっていいほど、人間らしかった。
人間のもっとも根源にある泥臭さや醜さ、そして逆に美しさも嫌というほどに見せ付けられる魂の小説でした。
猫にかまけて (講談社文庫)
猫好き、動物好きの方は当然楽しめます。元々好きな猫に付いて書かれてるのですから。その大好きな猫の事をあの町田康さんが書いてるのです。最高です。他の作品よりは少し軽いリズムな気もしますが猫達の愛くるしさと心地よいテンポ、笑いと感動とがいちどに味わえます。
猫を飼ってる方は「うちの子もこの技使うわ」とか「これは出来ないなぁ」なんて思いながら楽しめます。我家の猫は高齢の所為か「ココア様」と大変似ていると思います。若い頃は「サルーン」をビシッときめてました。
そして動物を飼った事の無い方にもぜひ読んで頂きたいです。動物を飼うという事、共に生きるという事、喜びや悲しみがきちんと書かれています。奥様の言葉には本当に共感です。
くっすん大黒 (文春文庫)
町田氏の小説処女作にして傑作・快作。
町田節と言われるその特異な言語表現は圧巻!!
ストーリをただただ楽しむのではなく、一語一語を楽しめる作家ですね。
カップリングの『河原のアパラ』もこれまた笑いに溢れた傑作です。
頗るお勧め。