Piss (講談社文庫)
その躍動感と緻密に計算された言葉の力技は相変わらず。駆け出し時代から間も無くに書かれたにも関わらずアッという間にもはや「中堅」のような安定を見せ出した作品集。デビュー以来着目、観察してきているがこの作品群に至っては、筆慣れしたがゆえの氏、多少のダレ・緩みもそこに見られるのも否めないが、と苦言を呈しておくのはひとえに彼女の忠実なファンであるがゆえのこと。社会でスレスレのところに辛うじて立つ拠り所の無い若い人たちの描写に氏が恐ろしく通じていることを世に知らしめた作品集でもあった。やっと三人称で書けるようになったばかり、とい自分で言っていたこの時期。今後いかなる展開を見せるか、全く目が離せない、数少ない期待の作家である。
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居たなあ、小学生の頃、クラスに奇麗なお母さん。
そんな他愛もないことを想い出した「女神のかかと」がお気に入りかな。
音楽のセンスも良かった。まるでお洒落じゃないところが。
「夜の舌先」はマリファナでラリった高岡早紀が妄想する、安っぽいSEXシーンが良かった。
ああやって歩いたこと、誰でもあるでしょ?
「玉虫」は梅雨を感じさせる撮影が見事だった。
これだけ配役を再考して80分ぐらいに撮り直したらおもしろいかもしれない。
「桃」「太陽の見える場所まで」には余計な女優がひとりずつ居た。
キャスティングのミスだと思う。
ダンスの兄さん、姐さん達は必要ない。消費者金融のコマーシャルみたいで興醒め。
血い花 (集英社文庫)
国外居住者なので、室井氏のテレビ勇姿を一度も拝んだことはなく、話によると今やマスコミ露出度が高いとか。作家であることを忘れらつつあるのでは、それはつくづく残念。彼女実は作家としてこそ、なかなかやるもんだ、ということは、もっと知られるべき。修行もそこそこにデビューし、その a)歯切れの良い口語体一人称 b)人間生態系観察の鋭さと今日日本の世の中に生きる女子としての悲哀・率直な心情吐露 そして c)ひとつの文章から次への小気味良いジャンプ (彼女が短編の名手であるゆえん)等、この作家ならではの特徴を既に具えた彼女の作品は、放置されるにはあまりにも惜しいため、ここに一筆書いておきたい。上記思い付くまま上げた室井氏の、それは天性のモノともいえる、作家としての類いまれな資質です。
ああ〜ん、あんあん (集英社文庫)
室室井佑月が高橋源一郎との愛の日々を綴ったエッセイ。高橋源一郎はムロイさんで結婚4度目。冷静に考えて、そんな男との結婚が長続きするはずがない。しかしムロイさんにはその冷静さがない。だから、愛情の出し惜しみなんてしない。全身全霊で愛する。サービス精神旺盛な彼女は、まったく出し惜しみすることなく、その愛の日々をエッセイに綴る。
結局、みなさまご存知の通り2人は離婚してしまった。原因は高橋氏の浮気。ムロイさんはあとがきで怒り心頭だ。そりゃそうだ。信頼し切っていた男に裏切られたんだから。でもなぜか、この本を読み終わっても浮気して妻と子どもを捨てた高橋源一郎を憎む気にはなれない。それはたぶん、ムロイさんが愛情たっぷりに描いた高橋源一郎像のせいだろう。
読み終わったら、なんだか元気になってしまった。わたしもムロイさんのように、素直になりたいものだ。
死ぬまでにしたい10のこと (ヴィレッジブックス)
実際、本書を手にとって読んでいる間非常に幸福な時間を持つことができた。タイトルにあるように非常に切実な質問に、回答者が答えるという構成なのであるが、それほど、暗い感じではない。というか、むしろ、明るくポジティブな内容なのである。それぞれの回答者はそれぞれの人生を抱えていて、それを真摯に見つめ回答をしている。それが、2ヶ月後の死という追い詰められた状況で、一斉に輝き出すかのようだ。回答者がすべて女性ということで、やはり、「愛」や「子供」に関する回答が多い。男性の私としては、赤裸々な「愛」の告白に多少赤面する所もあったが、女性の(一風変わった人たちが多いにしろ)考えの自由さとおおらかさを知ることができたと思う。それぞれの回答者にはそれぞれの人生があり、優劣なんてつけられない。ただ、私の心にとても響いたものとして、酒井順子さんの「サマルカンドへ行く」というものがある。テレビで一瞬見た衝撃的な美しさに打たれただけのその場所に行く。なんてすばらしいことなんだろうと思った。