The Lost Symbol
ダン・ブラウンの作品の中では中程度の出来。「天使と悪魔」くらいか。舞台はワシントンD.C.、フリーメーソンをめぐる話の展開は最初は前作同様にスピーディに展開する。ダビンチコードでパリやロンドンに旅行客が集まったように、ワシントンに観光客が集まるかもしれない。が、全体としては竜頭蛇尾。冗漫の感は否めない。ただ、テーマとなっている彼の宗教感(エジプトの太陽神信仰も仏教もキリスト教も、根本は一つ)や、人間の「思念」を物理的なものとしてとらえるなど、単なる神秘主義でなく、興味深く読めた。ただ、もう少し推敲してから、コンパクトにまとめた方がよかったのではないかと思い、少し残念。また、今回のヒロインは、いつもの若いキャリアではなく、50代に設定したのは、同世代の者としては共感を覚えた。
フリーメーソン (「知の再発見」双書)
この本が主張している程無害な集まりとはおもえないが、逆に極端に害を主張する本も多いので、バランサーとして読むのもいいかも。少なくとも、客観的にメーソンの流れや起源が分かる。
The Lost Symbol
「Da Vinci Code」と比較して、本書は期待はずれとする意見もあるかもしれないが、個人的には同等と感じる。
The Lost Symbolは舞台がアメリカであり、登場人物のほとんどがアメリカ人であるため、Da Vinci Codeで見られた「典型化されたヨーロッパ人像」「言語を英語に切り替えて言った・フランス語で言った」などの煩雑な描写がないだけすっきりしていると思う。
平易な文章で書かれており、どんどん読める。
しかし、他の方も言っているようににページ数が多すぎる。この内容ならば、半分くらいのボリュームが適正だろう。
内容が濃くてページ数も増えたのならいいが、「肉付け」しすぎの感が否めない。
したがい、途中斜め読みした箇所が数箇所あったが、物語を理解するうえでなんら問題がなかった。
また、物語中の「敵」は、あまりにページ数が多くヒントとなる言い回しが散見されたため、話の半ばでオチの見当がついてしまった。
また、登場人物の個性が感じられない。
謎解きをめぐっても、逃走劇の展開でも、それぞれの個性をきわだたせて描写できる方法はあったはずだが、あまりされていない。
個人的には、「ヨーロッパ人」として個性を際立たされていた人物がみられたDa Vinci Codeよりは良いと思うが、少々残念である。
ただ、前半で描写されるさまざまな事柄は、事実に基づいており、刺激的だ。
知的好奇心は十分満たされる。インターネットなどで実際に調べるとより楽しい。
読みやすく、知的好奇心も満足させてくれ、スリリング。
娯楽小説としては基本的にレベルが高い作品だ。