ワタリ 1 (白土三平選集 新装版 13)
本作の筆が主に赤目プロの小山氏によるものである、というのは有名である。
でも、私は他の作品より本作や「真田剣流」の画風が好きだ。
適度なデフォルメと省略で、非常に読みやすい。
だから、ストーリーも良く覚えている。
初読時は小学生であり、「少年マガジン」誌でリアルタイムで読んだ。
とても魅力的な作品である。
基本的に伊賀を舞台にした忍者マンガであり、他の白土作品と同様かそれ以上に、登場する忍者各人の独特の術がばんばんと出てくる。
現実感があるようだが、子ども心にもなんとなく無理な感じもするという、絶妙のさじ加減の術であった。
全四部構成なのだが、私は第一部が特に好きだ。
第二部以降も面白いのだが、第一部の“おきて”の謎、首領の謎等々とその解決は、上質のミステリのようである。
そして正邪を問わず登場する忍者すべてに、実に強い個性と存在感がある。
東映による特撮映画化は失敗だったが、アニメーションでも良い、動いているところを見たい、と思わせる。
また、子ども心にも、ワタリがひんぱんに女装するのには、こいつはあぶないんじゃないか、という、変な考えを持ったものであった。
たしかに女性的に描写されてはいるが、子供だし、主役だし。
“オボロ影”も必死に考えたものだ。未だに分からないけれども。
第二部のゼロの忍者編もまた、その正体をめぐる謎解きが本格ミステリだった。
しかし、その解決には若干の矛盾があり、そこが不満だった。
そして第四部に至り、本作のストーリーは発展的に破綻する。
あの正体があれとは・・・
あんなにみんなで化かし合いをしたら、それこそ不条理になってしまう。
ということで、私の中では、「ワタリ」といったら第一部なのだ。
ストーリーと絵柄が渾然一体となった、非常に魅力的な作品だ。
「サスケ」よりも「カムイ」よりも、白土長編の中では最も好きな作品である。
カムイ伝全集―決定版 (第2部12) (ビッグコミックススペシャル)
カムイ伝は、人間も自然の一部で、叡智や策略で持って文明を築いているように思えるが、その殆どは動物のもっている摂理なのである、ことを描いているのではないかと受け止めています。
輪廻転生とは、親子あるいは師匠と弟子、上司と部下といった関係の中にも見出されるのではないでしょうか。
第12巻は、白い狼の子をカムイが夙谷に連れて帰る場面で締めくくられています。
随分昔の話になりましたが、カムイと兄弟のように育った白い狼。
命は繋がったかのように思えます。
大きな視点から、人は何のために生きているのか、どういう生き方をするのか、と問いかけている大長編作品です。
果たして、第3部を読むことはできるでしょうか。期待は膨らむばかりです。
カムイ伝 (1) (小学館文庫)
強くなりたい非人カムイ、本百姓になりたい下人正助、家老の子竜之進と非人オミネの恋。生まれ得た身分に「らしく」生きることを強いられた時代に、それに抗う生き方をした人たち。自然の摂理と違って身分制度は人間の作ったものであるから必ず綻びがある。江戸幕府の作った身分制度は圧制を強いられた農民たちによって支えられていた。綻びは農民たちの我慢が限界に達したときに一気に解れる。非人はその農民たちによる綻びを繋ぎとめておくために幕府が作り出したもっとも重要かつもっとも酷い扱いを受けた人々である。最下層の非人たちは見上げ怯える眼しか持っていなかったがカムイは違った。そんなカムイを含め時代に翻弄された人々の物語。
カムイ伝全集―決定版 (第2部11) (ビッグコミックススペシャル)
物語の舞台は、再び日置に戻り、鉱山開発のエピソードに移ってゆきます。
日置7万石で現在は天領。お取り潰しにあった城跡が残っています。
そこは今、野性猿の棲家となっています。
野性猿歯っかけと金鉱を独り占めしようと企んでいた谷湯屋の喜太郎の不思議な縁。
歯っかけは偶然餌場を追われ城跡のテリトリーに侵入。
城跡猿とボス猿の立場を賭けた死闘が待っています。
喜太郎は、九死に一生の場面を潜り抜け、鉱山に雇われます。
歯っかけと喜太郎。この一人と一匹。日置に何が起きるのでしょうか。
忍者武芸帳 [DVD]
見終わって思ったことは、ちょっと詰め込みすぎやしないか?と言うことでした。
原作の「忍者武芸帳影丸伝」は貸し本17巻にも及ぶ長編。それを最初から最後まで
約2時間に詰め込んだと言うことで登場すらしなかった人物がいたことはちょっと残念でした。
でも力強い主題歌や影丸たち忍者のかっこよさは損なわれてなかったのでよかったと思います。