ブロンテ家の人々〈上〉
ブロンテ一家の生活を、まるで彼らの生活をのぞいているかのようなゆっくりとした流れで書いてあります。
一般的に彼女たちの人生は短くはかないように思われがちですが、この本では彼女たちの生活や社会的な運動やキリスト教の動きなどが事細かに書かれていて、他の本よりも時間がゆっくり過ぎていきます。そのために彼女たちの人生がうまくいっていた時間も感じとれて、彼女たちに幸せな時間をあったことを気づかせてくれます。
他の本と違うのは、社会的な動きが詳しく書かれていることです。シャーロットやエミリーだけに注目すると忘れがちになる社会の動きが、とても細かく説明されています。
私はこの辺りのことには関心がありませんが、パトリックや当時の教会の抱えていた問題を研究するには役立つことでしょう。
本書に書かれていることはギャスケル夫人が書いたシャーロットの伝記と異なる内容もあります。シャーロットを研究する人なら『シャーロット・ブロンテの生涯』だけなく、本書を読まれることを強く勧めます。特に彼女の父パトリックに対するイメージはこの本を読んで大きく変わりました。(どちらの本に書かれている事がらがより真実に近いかは、想像するしかありませんが。)
この本は情報がとても多いです。本自体も分厚いですが、ブロンテ研究をするには間違いなく役に立つはずです。
ハムレット (新潮文庫)
他と混ざって表示されますがご了承下さい。『Hamlet: BBC Dramatization (BBC Radio Presents)』のレビューです。
最初の音楽から衝撃を受けました。異世界への扉が開くみたいな感じでした。サー・ジョン・ギールグッドの父王の霊が怖過ぎます(笑)。オフィーリアの兄レアティーズにジェイムズ・ウィルビーとか、キャスティングが絶妙。ハムレットのケネス・ブラナーは映画よりこちらの方が好きです。
プレニテュード――新しい〈豊かさ〉の経済学
日本を含む先進国が邁進してきた、「成長志向」の経済学がぶつかっている壁が誰の眼にも明らかになりつつある。拡大する一方の経済格差、リーマンショックに始まって今も進行中の金融危機、財政赤字に起因するヨーロッパの国々の危機、見通しがつかない環境問題など、枚挙にいとまがない。本書は、「プレニテュード」という、多次元的な意味を持つ<豊かさ>を、これからの世界の目標とすべきと提言している。著者は、数少ないこの分野の専門家であり、最新情報の情報源としても役立つ。
本書のテーマは、経済だけでなく、環境、エネルギー、消費、食料、労働時間、地域社会など、非常に広範囲に及ぶ。成長を志向せずに、生活を楽しむためには、金銭的な富裕さ以外に、<豊かさ>を再定義する必要がある。いくつかのキーワードは、地域コミュニティの再興、労働時間の短縮による雇用の拡大と家庭重視への復帰、貪らないスロー消費などである。
本書は、新しい<豊かさ>を理論付け、また発想を広げて行くための手掛かりとなる。日本は、和食、リサイクルによる環境保護、まだ地方を中心に残っているコミュニティなど、世界に発信できる多くの知恵があるはずである。東日本大震災後、日本の社会にも変革の兆しがある。本書は、各地域社会で活動している人々にも様々なヒントを提供してくれそうである。