俵屋の不思議
京都俵家の話。
当たり前ながら小生は 俵屋には泊まった事はない。京都を代表
する旅館にて 残念ながら手が出ていないし 41歳の小生は この
旅館を泊まるにはお尻が青いのかもしれない。
そんな小生にしても本書は楽しめたし なにより 襟を正すという
ような 一種厳粛なものを感じた。老舗旅館が 伝統を守りつつも時代
に取り組んでいく姿が 非常に清々しく描かれている。多くの職人に
支えられつつも その職人たちを支えている俵屋の姿には感銘を
受ける。
愚直 という言葉を久しぶりに思い出した。これは東洋の知恵だが
「愚」という言葉には 相当 良い意味があると思う。これをFoolと
訳したら 欧米人には この深い意味が分からない。そんな欧米人に
は 本書に出てくる職人達の「愚直」な姿を見せてやれば 良い説明
になるかもしれない。
そんな風に思う次第。
時代屋の女房 [DVD]
時代の設定や当時の風景は古いものですが、むしろ懐かしさを感じるぐらいに
適度なもので、かえって古道具屋の店の雰囲気とピッタリ合っていて
違和感無く見ることが出来ます。
夏目雅子さんは、この作品の2年後に帰らぬ人になりますが、
しっかりと役にはまった最高の演技を見ることが出来ます。
銀色の傘をさし猫を抱いて時代屋を訪れるシーンは、すごく可愛く愛らしい。
共演する俳優陣も個性派揃いで、森崎東監督の手腕も光ります。
下町の現実的人情味ある風景に、謎の家出を繰り返す真弓のミステリアスな行動が、
アンバランスなのに何故か面白い。
ラストシーンは、とても嬉しくなりホッとしてしまいます。
映画の舞台裏を案内してくれる特典映像は必見です。
アブサン物語 (河出文庫―文芸コレクション)
読んだのはもう随分前になるのですが、とても面白く読めました。なんの誇張もない、ただただアブサンへの愛情、そんな言葉もわざとらしく聞こえるような自然な関係が描かれていて、とても感動しました。ぜひ犬・猫好きな方に読んでいただきたい一冊です。
帝国ホテルの不思議
帝国ホテルは格調高く、それなのに居心地がよくきめ細かいサービスが行き届いたホテル。
ホテルで働く30人にスポットを当てて書かれています。
それぞれの職場でまさにプロ=職人技(おもてなしの技)の数々が描かれています。
日本を代表するだけに、自分の仕事に対して、努力し身に付けたおもてなしの技を磨き、
普通に熟すまでの日々の積み重ねが見えるようです。
読み終えると、職人さんの働きぶりをこの目で、肌で感じてみたくなりました。
本を読んだ後に行く帝国ホテルが楽しみです。
時代屋の女房 [DVD]
昭和50年代、古きよき時代の東京下町の商店街を背景に繰り広げられる、屈折した男女の愛の展覧会のような作品。直木賞を受賞した原作は絶版になっているので、ネット古書店で手に入れたが、この作品に関しては、映画の方が、原作よりも優れているように思う。おそらく映画史上に残る名作の一つであろう。
主役の真弓と作中のエピソードに出てくる美郷の二役を若くして逝った夏目雅子が演じているが、始めてこの映画を見たとき、夏目雅子のあまりの美しさ、可憐さに驚いた。彼女の光り輝く美しさ、気品ある華やかさ、愛らしさはこの映画によって永遠に後世に残されることだろう。
夏目の相手役、時代屋の主人安さんを、若き日の渡瀬恒彦が、夏目に答えて、すばらしい名演を演じている。
夏目の大胆・鮮烈な演技と渡瀬の表面淡々としながらも愛の苦悩あふれる迫真の演技が本編最大の見所であるが、 助演者も力量ある俳優を揃え、それぞれに好演で、特に津川、中山、名古屋、平田などさすがと思わせる。
原作は短編に近い短さで、主人公はじめ主要人物も薄墨色の背景のなかに沈んでいる。人物も映画ほどに魅力的ではない。それに対し、本編は、人物の一人一人にスポットライトをあて、鮮やかに背景のなかに浮かび上がらせた。どの人物も魅力的である。原作を超える名品という所以である。